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はじめに

こんにちは、uraです。
アイドルが好きで、二次元アイドルの衣装デザインを担当してきました。
その中で、より魅力的で説得力のある衣装とはどんなものだろう?どうすれば衣装をより魅力的にできるのだろう?と考えたことを共有いたします。

技術的なテクニックというより思考の話になります。
ふんわりとした内容ではありますが、何か参考になる部分があれば嬉しいです。

魅力的な衣装とは?

「魅力的な衣装」と聞いて、どんなものを想像するでしょう?
とにかくかっこいい衣装、かわいい衣装、個性的でユニークな衣装!うんうん。
着ている人に似合ってる衣装、世界観やコンセプトに合っている衣装!うんうん。

みなさん「魅力的な衣装」と聞いたとき、きっと服そのものだけではなく、着る人やシチュエーションも合わせて考えたかと思います。
たとえばフリルやレースたっぷりのふりふりでかわいい服もスポーツの場面には不向きですし、時代や文化、趣味趣向によっても、何が魅力的で相応しいのかは変わってきます。

つまり、衣装の魅力を考えるときには、誰が?どこで?何のために?などといったストーリーも一緒に考えることが必要なのかなと思います。

そして、ストーリーを明確にすることで、それに伴う魅力に関して、より具体的に考えることが可能になるかと思います。

衣装の中のストーリー

では、衣装の中にどのようなストーリーが内包されているのか、内包したいのか、を踏まえてデザインする際、まずどこから考えれば良いでしょうか?

ここで、衣装デザイナーの役割について考えていきます。

衣装デザイナーの役割

まず、衣装デザイナーという仕事は、その世界の衣装を設定する仕事です。
こちらの世界から見ると、架空の世界の出来事を衣装デザインに落とし込んで表現する仕事とも言えます。

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このとき、向こうの世界に行ければ、より具体的に衣装の流れを想像できるのではないでしょうか?

例として、アイドルの衣装をデザインすると仮定したとき、向こうの世界での衣装デザイナーの役割がどのようになるのか考えてみました。

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おお…こちらの世界の仕事としてはやることは同じでも、向こうの世界ではさまざまな役割を担っていそうです。

アイドルの衣装といっても、ライブのときの衣装とグラビア撮影のときの衣装、バラエティ番組の衣装など、趣が異なるものを着ていますよね。
スタイリストさんやライブの衣装デザイナーさん、演出さんなど、さまざまな人の関わりの中で結果的に身につけているのがその衣装となります。

デザイン時に自分がどこの役割を担っているのか考えることで、より存在に説得力のある衣装デザインができるのではないでしょうか。

衣装とキャラクター

さて、それではこれまでの流れを踏まえたうえで、実際に衣装をデザインしていきましょう。

今回衣装デザインの対象になるのは、「普段はボーイッシュだけど、実は女の子らしい・可愛らしい恰好に憧れている乙女チックな一面もある」という設定の架空の女の子アイドルです。

例① 私服

伝えたいもの:キャラクター性、ストーリー
衣装デザイナーの役割:本人

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左から A:ボーイッシュな私服(普段着) B:ガーリーな私服 C:ガーリーな私服(比較用)

Aを普段着とすると、Bの衣装に対してどのようなことを想像するでしょうか?
Aと比較してBはガーリーな衣装となっていますが、あまり垢抜けた印象ではありません。

これは「普段おしゃれにあまり興味の無い女の子が初めておしゃれをした」イメージで設定した衣装となります。
たとえばスカートは恥ずかしいのでキュロット、髪の毛を結んだりアレンジするのは難しいからヘアピン、長いスカートは動きにくいから嫌だけど脚が出るのも恥ずかしい…けれどタイツは挑戦できなかった。などなどあえて野暮ったさを残してデザインしています。

隣に並んでいるCと比べてみてください。
先ほどBでは「意図的に野暮ったさを残してデザインした」と説明しましたが、これは「キャラクター性を表現した」と言い換えることが出来るかもしれません。
改めてCを見てみると、特におしゃれに無頓着な様子もなく、むしろこなれたような印象になっていると思います。かわいい衣装なのですが、これだとキャラクター性を表現するには相応しくないかもしれません。

一方で、Cのような衣装で「撮影用の衣装」「誰かに選んでもらった衣装」を表現することも可能です。単純に服装のみを見てかっこいい/かわいい、似合う/似合わないだけでなく、どうしてその服を着ているのか?という点に目を向けると、より「らしさ」のあるデザインができるかと思います。

例② ライブ衣装

伝えたいもの:アイドルとしての魅力、ライブのコンセプト
衣装デザイナーの役割:ライブの衣装デザイナー

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左から A:専用衣装 B:メルヘンガーリー C:クリスマス

A

キャラクター本来の魅力を押し出した衣装としています。
スポーティな爽やかさ、溌剌とした印象、動きやすさを重視しました。
持ち曲がタオル曲なので衣装の腰にタオルを提げているという設定です。

B

ガーリーさを引き出した衣装になります。
女の子らしさへの憧れ、フリル、レース、リボンなど、普段はなかなか身につけることのできない要素を叶えています。
アイドルと相談しながら制作しました。

C

クリスマスライブでの衣装です。
ケープは赤/白のリバーシブルになっており、ホワイトクリスマスの演出に合わせて途中で裏返すことで早着替えができます。

簡単にデザインとその意図や設定とを並べてみました。
みなさんどうでしたか?

書いていた内容を感じ取れなかった!違う印象を受けた、などもいらっしゃるかと思います。
創作物は最終的に受け手に委ねられるので然りではあるのですが、作り手として一定意図を持って制作することで、ギャップが生まれた際にも何がそれを生んだのかの判断もつけやすくなります。

また、特に現代日本の二次元アイドルについて、受け手は「生きている」「存在している」ことを求める傾向にあります。彼らの世界で自身が関わっている想定で衣装をデザインすることで、よりアイドルの実在性や手触りを表現できるようになるのではと考えます。

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おわりに

いかがでしたか?
何かヒントになるものはあったでしょうか。

今回はアイドルの衣装デザインを軸にお話しましたが、たとえばアバターの衣装であれば着せ替えする人に体験させたいこと、テーマやブランドによる差別化などが重要になるかと思います。また、ファンタジー世界の衣装であれば種族や職業などによる服飾文化、服飾に使われる素材や染料、服飾技術などを考える必要があります。

どれにしても、まずどうやって衣装が成り立っているのかを考える、何を魅力として提供したいかを考えることが、より魅力的で説得力のある衣装へ繋がってくるかと思います。

正解はありませんが、正解が無いからこそ、常に考えながら制作を続けることが必要だと感じています。
これから先、よりアイドルを輝かせることのできる衣装を生み出していきたいです。
この記事で少しでも心に残るものがあれば嬉しいです!