はじめに

この記事は KLab Creative Advent Calendar 2018 の 12日目の記事になります。

こんにちは。背景で飯を食って20年、Hi-emon-tryと申します。なんか背景で20年も飯食っていると背景でもそれに付帯する構造物とか建造物とか設定とかのお話を決める事になりがちで、いっそ「金重が全部決めちまったら」と言われたり言われなかったり。

そんな中で世界観設定に携わるお仕事を沢山してまいりました。

前の乙女ゲーの話

世界観設定、要はゲームにおける世界の仕組みをどう決めるかというお話なんですが、これが簡単にできるように見えて実はわからない方も多くいらっしゃいます。

単に自分の設定をさらけ出すだけでは不足していることも多い。

じゃ、一体何が必要なの?

その指針となればよいと思ってこの記事を思いつきました。

ここではお金から連想する世界観の作り方を書かせていただきました。

世界を設定してみたい!でもどうやって?または上手くできない!という方に向けて書いています。

さて、世界観を決める!決めなくちゃならない(立場的に!)

そんな方が直面する問題は大体2つ。

①世界観を決めたことが無い。

②世界観を決められるが他人の批評にさらされたことが無い。

などがございまして、①はそもそもやった事ないのでやり方がわからない方。②は妄想の中ではいくらでも設定してるけどゲーム仕事としてはやったことがない、もしくはPやらDやらその他の皆様方にご自分の世界をさらけ出したことが無い方などがございます。

実際、①も②も業務の課題として積まれるとなかなかに厄介。特に世界観設定のクォリティーっていう所までお話が進みますとこれはもう素人さん御断りの世界でございます。

そこで世界に於けるお金の話です。

ただ、アレですよ。

とても基本的なことをお話しします。

世界観の設定ができる方(先天的にそういう方はいらっしゃいます)には実に退屈なお話です、とハードルを下げさせていただきます。

さて。

前ゲーム制作では乙女ゲーという物を作ってました。あれです、立ったにいさんと立った兄さんが一緒に走るような話です。匙一つ間違えると気に入られなかったりとなかなか厳しい世界でございました。

女性のDがおりまして。

そのDが男性の設定以外にあまり興味がない人でして。

物語で悪い大臣が出てきたりするのですが。

(σ´・ω・)「〇〇さん、この世界って大臣てどのくらいの権力者なんですか?」

( ☌ω☌)  「どのくらい…の権力…??」

質問者はシナリオライター。

ライターからすると悪い大臣が王様の目を盗んで悪事をする、しかも何回もする、しかし捕まらない、こいつはなんなんだと。

至極全う意見ですが、ゲームにしてみれば裏設定に近くゲームとは関係ない。

そうするとD的には興味もない。

つまりは答えられない。

この辺りで二週間ぐらいシナリオがすったもんだしたりいたしました。

世界観設定の話

世界観設定、それはつまりその世界はどういう成り立ちなのかという文書または画像での設定です。基本的にはシナリオが考えたりDが考えたり、場合によってはPが介入してきたりする分野です。キャラや背景も無縁ではありません。

設定とはつまり【うそ】。

でもユーザーを唸らすゲームは大概上手い【うそ】をついていることが多いのです。【うそ】って言い方が悪いですかね。【洒脱な方便】ってことでしょうか。

【洒脱な方便】の設定とはどんなものかというと、すべての設定が矛盾なく存在ししかも連動している状態を言います。Aという設定はBを補完し、それをCが裏付けしていてCの存在理由はAだ、みたいなことでしょうか。例を出し始めると話が長くなりますのでそこのどこかの機会に。

それで。

作りましたあなたの世界。

愛おしいですね。うまく作り上げていきたいですね。

設定の厚みとは世界の厚み、情報の多さは世界に対しての愛です。

そんな世界を何から設定すれば良いのか。

キャラクター?

いやいや、キャラクターはやりたい事、ユーザーに見せたい事の集合体。一回固定してしまった設定やコンセプトは動かしがたい。それなら王様やら大臣やらの政治機構から決めればいいかな?

政治とか社会組織とか詳しいですか?そんなに凡例を挙げられる?大臣はどんな機構が成立していれば問題ないのかな?

世界は貨幣から想像するといいよ

あなたが作ったその世界、過不足なくいい塩梅で設定をしていくのはどうすればいいのか。

どこから始めればいいのか。

そこで出てくるのが【貨幣】つまりお金の話です。

世界を設定するにはまずどんなお金が使われているのかを考え始めるのが良いです。

貨幣は殆んどの世界にあり、その世界で決定的な役割を担う物ですが驚くほどユーザーに注目されないガジェットです。しかも、設定を変えても重要なコンセプトに関連しない。つまり最初に手を付ける設定として便利なのです。

貨幣の種類

貨幣はザックリ3種類に分類できます。

①物々交換

②貨幣(貴金属)

③紙幣(印刷物)

凄くザックリですが分けるとこんな感じ。もっと厳密に追及するとさらに分けられますが、貨幣の種類を掘り下げてもあまり意味が無いので割愛します。ここで重要なのは貨幣の種類ではなく、それに付帯する【信用】と【文化】ですね。

ここで、【設定の連想】という発想法を使い、世界観の足掛かりをつかみます。

少し連想してみましょう。

①物々交換

人々は物品を直に交換して暮らしています。物品の価値は常に変動していて、取引者の感覚が価値を決めていきます。言ってしまえばより個人の価値がそのままダイレクトに取引の価値を生み出します。

②貨幣(貴金属)

原始的な金属、または鋳造された貨幣が使用されています。物々交換と違う所は【価値の周知】の度合いです。みんな貴金属が貴重な金属と認知しています。尚且つ貴金属を交換することで価値を交換するという事を理解しています。

原始的な物々交換ではただの石ころだったと思われる貴金属に一定の価値を見ています。

ここで重要なのは貴金属という金属に一定の価値があり、それを保有することが価値を保有することだと人々が理解っている事です。

③紙幣(印刷物)

人々は紙または持ち運びに特化した何かに価値を認知し、且つそれを交換することに異議を唱えません。ケツ拭く紙にもなりゃしねぇとか言いません。しかも、何かしらの機関がその紙幣(または何か)の価値を保証しています。そして、それは紙幣(または何か)を大量に流通させることができ、流通量もコントロールできる権力を持っています。

貨幣から推測できる文化レベル

さて、ここのでの話で何がわかったでしょう。いや、何がキモだったかなというべきでしょうか。①から③に進むにつれて文明が発展した?時代が進んだ?いやいや、大覚アキラ様の治める大東京帝国は物々交換でしたよ、確か。

変わったのは人々の認知、正確には価値観が貨幣の設定を支えています。言い換えれば「コレには価値があるという認知」が①より③に向かって広がっていきました。

人はこれを【信用】と呼びます。信用とは読んで字のごとく、人々が信じて用いる価値という所でしょうか。

悪い大臣の居る世界の貨幣、そして信用の度合いはどれくらいが適切なんでしょうか。

一から連想して答え合わせをしたいところではありますが、そんなスペースもなさそうなのでここはさっさと答えを羅列してしまいましょう。

悪い大臣の居る世界は【紙幣】を使い【活版印刷】が存在し、その流通量をコントロールする【政府】が存在し、その中に【大臣】というポストが存在する世界です。

車はどうでしょうか?電気は?まだまだ設定したりないですが、【紙幣】の質や【活版印刷】の普及具合から連想し、世界を広げていけるのです。たとえば、【活版印刷】は書類の大量印刷を連想させ、【本】が普遍的な世界だと連想できますね。という事は大量の書籍を配布することができ【学校】の設立が容易な世界という事です。学校があるという事は【識字率】もそんなに低くないのかもしれません。【識字率】が低くないという事は国内では【言語の統一化】はなされている可能性があります。

連想が止まりませんが、このように一つの設定を皮切りに次々設定していくことが可能です。

そして、貨幣からの連想の素晴らしいところはこれだけ好き勝手考えてもキャラクターの設定や地名、世界の謎などに全く関与することが無いという事でしょうか。

使う設定と使わない設定

そんな使わない設定作ってどうするんだ!という意見が聞こえそうですね。

確かに確かに。

では、主人公の大好物がパンケーキだったとします。よくありますね好物はパンケーキ。

皆さんがすんなり「好物はパンケーキ」を受け入れられるのはパンケーキが現実世界で徹底的に周知されているからです。

もし、パンケーキが周知されていない世界でパンケーキを説明する場合はどのくらいの設定がいるでしょうか。小麦粉と砂糖と・・・フライパンの説明からします?いやいや、小麦粉ってなんだというとこからかもしれません。えー、小麦粉とは小麦という植物からですねー。

キリがありませんのでこのくらいでやめときます。

未知の物品、または価値について説明し始めると設定はその後ろで数倍に膨れ上がります。同時に設定をしないと産まれない価値もあります。使わない設定という言い方が悪いのかもしれません。ユーザーが見えない設定というべきでしょうか。見えないだけであるんですよ実はね。これは背景設定をやって来た人間の設定に対する偏愛かもしれませんが、この世に要らない設定など・・・ない!!・・・たぶん。

さて。

繰り返しになりますが、この記事は世界を設定してみたい!でもどうやって?または上手くできない!という方に向けて書いています。出来る人はこの記事を読む前にもう設定ができる人なのです。

だから、なんでこの記事を書いたのか、意味が解らない方も多くいる事と思います。

ですが世の常として、デキル人はデキナイ人の憤りがわかりません。

発想できる人は発想できない人の引っ掛かっている原因がわかりません。

モテる人はモテない人がなぜモテないのかわからなかったり、モテない人はモテる人の苦労がわからなかったり。持つ者は持たざる者の苦悩はわからないですよね。

今更ながら聞けない〇〇の事ーのような記事がネット上にあふれる昨今、今更ながら世界の設定について足掛かりを示した記事があってもいいんじゃないか、そう考えて記事を掲載してみました。

一つのきっかけがその人のスイッチを押してしまう。

ゲーム業界に属して仕事をし発想にスイッチが入る、そんな瞬間を幾度となく見てきました。

基本の考え方、基本の価値の意味。

それをきちんと記し、後人に残すことも一定の価値があるのではないかと思い、この記事をしたためた次第です。

ちなみに悪の大臣はその後徹底的に設定が見直され、財務大臣でありながら隣国との兌換紙幣のレートに悩み、汚れ役を買いながらも影で救国を志す、主人公の本当の母親の親友という設定になりました。いや!…盛り過ぎだろ!